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SPECIAL INTERVIEW

古屋圭司プロフィール

自由民主党・北朝鮮による拉致問題対策本部長

前国家公安委員長・防災担当大臣・拉致問題担当大臣・国土強靭化担当大臣

 

■衆議院議員、岐阜5区選出。90年の初当選以来、連続当選9回。

 

■大臣時代、脱法ドラッグを「危険ドラッグ」と名称変更したことでも知られる。陶磁器文化産業振興議連や日本・太平洋島嶼国友好議連、日本・キューバ友好議連をはじめ、多くの議連会長も務める。

 

■著書に「そうだったのか!!『国土強靭化』」(PHP研究所)など。

政治と

政治と若者

――今年の2月で在職25年を迎えられたわけですが、昨年末の総選挙、そして春の統一地方選挙を振り返って、この25年の中で、若者をはじめとした有権者に変化はありますか

 

初当選をした当時(90年)の方が、全体的な関心は高かったように思います。今の若い人は、関心のある人の場合はとことん関心があって、ネットなどを通じても意見してくれますが、一方では関心のない人も多くて、極端な気がします。その分、今回選挙権が18歳に引き下げられることはチャンスだと思います。若者の絶対数が少ない中で、大学生のもう半分にも選挙権が与えられるわけです。

そうしたことからも、まずは政治に関心を持ってもらうことが大切で、たとえば大学でも18~19歳向けのシンポジウムを行うなどして、関心の度合いを高めていって欲しいです。昔であれば、親に言われて、投票に行く若者も多かったですが、今の20代は行く人と行かない人とが極端に分かれているように思います。

 

――これまで教育機関で政治の話はタブーとされ、そういった話を一切遮断してしまうことで、履き違えた中立性が根付いていたと思います。今回の選挙権の引き下げで、学内シンポジウムなど、幅広い考えを共有することで、正しい中立性を担保するということですね

 

そうですね。たとえば、よくオルグ(※1)みたいな集団が来ると、ニュートラルの人たちが嫌悪感を覚えてしまうわけです。そうではなくて、政治というものは、自分の生活に密着した話ですから、皆で真剣に考えよう、選挙に行こうということでなければなりません。ですから、幅広い選択肢を与えて、後は判断するのは皆さん一人ひとりなんだよということを、シンポジウムなんかでやってもらいたいわけです。

 

――今回の18歳への選挙権の引下げの場合に、学生や若者に政治を馴染ませるための政策や啓発はあるのでしょうか

 

 

やはり、若い人たちが一番関心を持っているのは、自分たちの将来です。大きく分けて、三つくらいあるかと思います。

 

 

まず一つは「年金」ですよね。自分たちが果たしてもらえるのかどうか。成人年齢を18歳に引き下げたときに、年金も18歳からになるのかという議論になってくるわけです。そういったときに、まず自分たちが本当に今の年金をもらえるのだろうか。もらえるためには、どういった制度が必要なのだろうか。給付と負担のバランスをどうしていくべきなのだろうか。そういったことは、しっかり議論していくべきだと。

 

 

そして二つ目は「雇用」、つまり就職の問題ですね。今は、昔と違って終身雇用が完全に崩れていますから、そういった中でどうやって自分自身の雇用の安定、それからキャリアアップをしていくかということに関心を持っている学生は多いのではないでしょうか。そういったことに対して、国がどういった政策を取ろうとしているのかに目を向ける必要があります。

 

 

それからもう一つ議論していただきたいのは「安全保障」。今回、安全保障法制の見直しを議論しています。一部では〝戦争をする国へ〟といった、間違ったプロパガンダをしていますが、事実は20年前と比べて安全保障の環境が大きく変わってきたということです。たとえば中国は毎年10%ずつ軍事費を増やして多機能の航空母艦を造っているわけです。航空母艦というのは、防衛のためではなくて、核以外のもので、攻撃をする一番強力なものが、この空母なわけです。そういったものを、次々に配備しようとしています。それから、南シナ海などをどんどんと埋め立てをして、領土を広げようとしていますし、あるいは、東シナ海では尖閣諸島をはじめとして領土問題が安全保障上の問題となっています。そうした中で、自分たちの国は自分たちの国だけでは守れませんから、やはり同盟関係をしっかりとして万が一の時に備える、これこそが安全保障法制の改定なわけでして、これによって抑止力に繋がるというのが正しい考え方なのです。

 

 

 

 やはり、皆さんの世代、そしてその次の世代まで、日本がしっかり平和であり続けるために、こうした取り組みをしているわけでして、憲法に規定がされている「平和主義」「基本的人権の尊重」「主権在民(国民主権)」の三原則は、どのように制度が変わったとしても、絶対に不変的な三つの価値なのです。これは、日本が戦後、大きく学んだ教訓ですよね。ですから今、憲法改正の議論もありますが、憲法改正の話になると9条の話ばかりが持ち出されてしまいます。この9条一つを取っても、1項と2項があります。1項のいわゆる「侵略戦争の放棄」、これはどんな憲法になったとしても、他所の国に行って国際紛争解決のために武力行使をする、これは絶対に認めません。その上で、領土・領海・領空は守ることが必要ですけども、そういったことは憲法には一切書いていません。それに自衛隊は、憲法の読み方によっては、憲法違反にも見えますよね。ですから、そういったところを修正をしていく、国際連携が行いやすい形で憲法を変えていくという必要があります。

 

加えて、それよりも、もっと大切なことはいくつもありまして、例えば危機管理条項は今の憲法にはないわけです。3.11のような国家的な危機になったときの危機管理に対する取り組みが、まったく憲法には規定されていません。世界の憲法を見ますと、90年以降に憲法改正あるいは新しく制定をした国は、国連加盟国の内93カ国あるのですが、100%すべて危機管理条項が入っているのです。つまり国際基準なわけです。何かあったときに、やはりある程度の私権制限をするなど、そういった考え方も必要になってきます。そういったことを、しっかり憲法上に規定する必要があります。

 

それからもう一つ、衆議院議員の任期は憲法で決まっています。しかし、もし3.11のような大災害が任期満了直前に起きたらどうなるのか。実際に、3.11のときには統一地方選挙の年でしたが、あれは法律上ですので、半年間の先送りをすることができました。ただ、こちらは憲法上の規定ですから、憲法を改正しない限りは衆議院議員の任期は延ばせません。憲法には、予算に関して、衆議院が優先されると書いてあります。その優先される衆議院議員が任期満了でいなくなるということは、災害対策の国家予算を計上できないという事態に陥る可能性があります。やはり、そういった意味からも、この危機管理条項というものは、しっかり入れていく必要があります。これも憲法改正なわけです。憲法は、世界では時代の変革に合わせて、それに合うように変えていますから、日本はどうしても憲法を変えるべきではないという空気が定着してしまいましたが、同じ敗戦国ドイツは実に戦後60回も憲法を改正しています。約200条を、一回の改正に2条や3条ずつと、丁寧に時代に合わせて行っています。そういうことが必要という認識はもっていただきたいです。

問題

拉致問題

 

やはりですね、多くの国民が拉致問題に対して、ブルーリボンバッジ運動(※2)や署名活動など、怒りの声を上げることが大切なんですね。それが北朝鮮に対する圧力にもなるわけです。やはり日本は、拉致問題を置き去りにしたら国民が許さないと。北朝鮮は、金(キム)ファミリーによる独裁国家ですから、民主主義のない国でして、世論などは一切関係がありません。一方で日本は民主国家ですから、この世論というものが凄く大切ですよね。そういう意味で、国民運動として一人ひとりが認識してもらい、そして北朝鮮に対して拉致は絶対に許さないという怒りの声を上げてもらうことが、拉致問題の解決に繋がっていくわけですね。

 

なかなか今、解決に向けての具体的な動きが表には出てきていないので、皆さんは不安だろうと思いますが、様々な取り組みをしていることは事実ですね。協議の中身については表向きで言えないことがありますが、党と政府が今連携を取って行っていることは皆さんにも理解していただきたいと思います。

 

 

 

――拉致問題に関しまして、全国の大学の学内における啓発ポスターの掲示など、古屋先生が拉致問題の担当大臣になってから、運動がより盛んになってきたイメージがあるのですが

 

 

――学内などでブルーリボンバッジを付けていても、このバッジ自体を知らない人も中にはいますが、ただ、付けていることでバッジについて聞かれることもありますので、口コミで広がることも事実ですね。

 

 

それで「私も協力する」と言って、カンパに繋げていくような動きが必要ですね。拉致問題は、安倍首相は、絶対に任期中に必ず解決すると、はっきり言明をされています。また、拉致被害者を返さない限り、北朝鮮は今後の将来を描くことができないということを分からせる必要があると、最近では言っています。金正恩をはじめ、キムファミリーが、そういう考え方を認識すること、それが結果として北朝鮮の尊厳を回復してくことにもなるのですね。

 

 

ーン問題

――タイムリーな話になりますが、古屋先生は党でドローンの対策小委員会の委員長を務められて、だいぶスピード感をもって法案を取りまとめられましたが

 

私が国家公安委員長だったとき、このドローンというものは、何か事件が起こる可能性があると、非常に危機感を持っていまして、当時も関係者と議論していました。今回の事件があり、速やかに対応しようということで、一ヶ月以内での取りまとめとなりました。今回、二段階方式となっていまして、一つは議員立法として速やかに行えることを行う。たとえば、三権である司法・立法・行政の長およびその機関、皇居、皇太子殿下がお住まいであられる赤坂御所、在外公館など重要施設を飛行禁止区域に指定して、飛ばした場合には直罰規定として、一年以下の懲役または50万円以下の罰金ということができることを法律にすると。ただ、それだけでは不充分ですので、やはり今後は政府内が連携していくことも必要です。たとえば、少し離れている防衛省の上空は、先ほどの区域に入ってないわけですね。そのため、関係省庁が必要性を認識して、速やかに飛行禁止区域に指定するように期待します。

 

それから、ドローンの健全な利用を阻害することがあってはいけません。ですから、健全な使用であれば、それは推進します。それから、ドローンの使用自体を「届出制」とするのか「免許制」とするのかも議論しなければなりません。製造事業者や輸入事業者、販売事業者といった機関との連携・協力なども必要です。以上のことは現在、関係省庁がチームをつくって、法律改正が必要かどうかを見極めて、精力的に議論を行っています。ですから、議員立法で行えることと、政府で行えることを、しっかり二段階で行ったことで、速やかに取り組めたと考えています。

ドローン問題

の保守主義

キュー問題

キューバ問題

――今年の4月12日に、アメリカとキューバによる歴史的な会談が行われました。古屋先生は「日本キューバ友好議員連盟」の会長も務められていますが、今回の会談をどのように見られましたか

 

 

やはりキューバは、中南米のリーダーとなりうる程に、レベルの高い国だと思います。ただし、アメリカが経済封鎖をしているので、非常に貧乏な国となっています。しかしながら、知的レベルと人材の豊富さは素晴らしい国です。

 

日本とキューバは、伝統的に非常に友好関係があります。たとえば、伊達政宗の命を受けて渡欧した支倉常長(※3)がキューバを訪問して、去年で四百年だったんです。それ程に長い歴史があるのです。ただ、アメリカが経済封鎖をしているので、どうしても投資となると、アメリカ側に気を遣って、なかなか出来なかったということはあります。しかし、今回アメリカが国交を回復させる準備をするとのことですので、日本もしっかり食い込んで、キューバの発展に貢献していきたいと思っています。今後、中南米のリーダーに間違いなくなる国です。

 

 

問題

憲法問題

――一部のメディアでは、憲法改正をめぐって自民党内でも、各党との合意形成を重視するグループと、憲法96条(※4)の先行改正を重視するグループの2つに分かれているとの報道があります。この両者が対極軸にあるとは思えませんが、こちらをどのようにお感じになりますか

 

政党には政党の考え方があります。既に自民党は野党時代の平成24年の4月27日に、主権回復60年を記念して、憲法改正草案を出しています。ただし、これがそっくりそのまま新しい改正案となるかと言いますと、なかなかそういうわけにはいきません。それはなぜか。憲法改正の発議は、衆参の憲法審査会で行います。そこで各政党と合意することが大切になってくるわけです。憲法改正は、国会議員の3分の2が賛成をしないとできませんから。たとえば今ですと、共産党を除く与野党が合意をするサインを示しているのは「危機管理条項」。ですから、まずはそこから始めていくべきではないかという議論もあります。

 

私は、超党派の「憲法96条改正を目指す議員連盟」(96条議連)の会長でもあります。民主主義の原則は「過半数」ですから、国会議員の3分の2ではなく過半数の賛成をもってして、国民投票に移すことができるようにしていきます。勿論、国民投票でも過半数の賛成がないと憲法改正できませんので、硬性憲法の性質は維持をしながら、国会議員のハードルも過半数にすると。その理由は、主権者は国民ですから、国民が憲法改正の可否について主体的に参画する機会を増大させるということです。「主権在民」と言いながらも、国民一人ひとりが、憲法改正について主体的に意思を表明する機会が、今ないわけです。それが、たった一つあるのが国民投票。ですから、国民投票を早く実現するためにも、憲法96条の改正から行うべきというのが、私の考え方なのです。しかし、この考えがまだ充分に理解されてはいませんので、引き続き努力していかなければなりません。

求める治家像

求める政治家像

――今の政界を見渡して、与野党問わず気になる政治家などは、いらっしゃいますか

 

私は、真の保守主義者です。真の保守主義とは何かと言いますと、日本が長く培ってきた歴史・文化・伝統を大切にする。それを大切にするためになら、大胆な改革も厭わない。新しいものがすべてならば、次の日から老朽化が始まりますから。

 

そうした、真の保守主義の思想を持って取り組んでいる政治家は、うんと私は応援したいと思います。

 

 

学生

学生生活

 

――ここからは、政策的な話ではなくて、古屋先生の学生生活のお話をお聞きしたいと思います。古屋先生ご自身、どのような学生生活を送られましたか

 

 

私はですね、学外のクラブに所属をしていまして、自動車レースやラリーをずっとやっていたんです。元々、車に関心があったのと、先輩がそういう関係者でしたので、その先輩に引きずられて。そうしたクラブには、スポンサーがついていましたので、その点お金もかからなかったですね。ただ、車のメカニックなどは、本当に覚えましたね。今でもたまに時間があると、サーキットを走ったりしています。

 

サーキットって安全なんですよ。歩行者いない、対向車いない、信号もない。それから、4点式・5点式シートベルトもして、完全防備でヘルメットもして……。勿論、レースをすると事故の危険もあって、危ないですけど。でも、自分で単独でサーキットを走る分には安全です。料金もそんなに高くないですよ。

 

 ですから、あまり学校で真面目に授業に出て勉強するタイプではなかったです。でも、成績は悪くなかったです。要領良くちゃんと(笑)。

 

 

――そうですか、羨ましい限りです(笑)。それこそ、高校・大学では安倍総裁(首相)と先輩・後輩の関係で――

安倍さんが一年後輩で。

 

安倍さんは高校の頃、社会科の先生に「日本が経済発展したのは、日米安保条約があるからではなく、憲法9条があるからだ」と講義を受けて、それに敢然と異論を挟んだのが、当時17歳の少年・安倍晋三氏で。学内で有名になりましたね。45分間くらい安倍さんと先生が議論をして、完全に17歳の安倍晋三氏が先生を論破したとのことで、昼休みなんかに話題になりましたよ(笑)。

 

ですから、安全保障などの国家観は、にわか作りではなくて、岸信介先生(元首相)の孫ですからね、やはり現場の実態は小さい頃から勉強していたということでしょう。

 

 

――当時から、安倍総裁とは親しかったんでしょうか

 

 

勿論、知ってはいましたが、同級生ではなかったので、当時はそこまでの付き合いはありませんでした。

 

大学では、安倍さんはアーチェリー部に入って。アーチェリー自体はそんなに上手ではなかったですが、大学4年生のときには学連の事務局長になっていましたから。やはり、そういう政治力が(笑)。普通、学連の役員って、著名な選手がやるじゃないですか。でも、安倍さんはレギュラーでビシビシやっていた感じでもなくて。むしろスポーツの技量よりも、マネージメント能力があったんでしょうね。

メッージ

学生へのメッセージ

――最後となりますが、学生の内にこれだけはしてもらいたいなという、学生へのメッセージをいただけますでしょうか

 

学生は、失敗することは恥でも何でもないですから。失敗してもいいから、目を前に向けて、どんどんチャレンジし続けていくこと。何にもしないでボーっとするのではなくて。

 

たとえば、女の子を口説くときもそう! あの子を口説くの「面倒くさい」だとか、「何かウザい」とか今言いますけど、そんなのは駄目。もう「当たって砕けろ」、何でもチャレンジ、目を前に向けて! それが、社会に出てからも、凄く役に立ちますよ。やっぱり社会は、この若者がどれだけ意欲を持って取り組んでいるかを見ているんですよ。ですから「そんな感じで~」とか言って、今の若者言葉で、断言しないで曖昧なのはよくない。やはり「自分はこうだ!」というのを持って、失敗したら「ごめんなさい」で。そういう「謝る勇気」と「チャレンジする勇気」ですね! やっぱり、これは絶対持って欲しいね。そういう人は、将来必ず伸びていくよ。

 

いろいろ四方八方に気を遣うのは、大人になってから、経験積んでからでも、充分間に合いますから。チャレンジする気持ちは、最初に身につけておかないと、歳を取ってからチャレンジしようと思っても、なかなか難しい。逆に、歳を取って気を遣うということは、すぐできますから。

 

――本日は、お忙しい中、貴重なお時間をありがとうございました。

 

 

ありがとう。頑張って!

 

 

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